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広報かつしか 令和2年新年号

葛飾の魅力を全国へ(1)

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葛飾区

■新春対談
葛飾区長:青木 克德(あおきかつのり)
映画監督:山田 洋次(やまだようじ)

日本中を笑いと涙で包み、国民的人気を誇った映画シリーズ『男はつらいよ』。「寅さん」と「葛飾柴又」の名を全国的に有名にし、区の観光資源を発展させました。昨年末の第50作公開を記念して、監督の山田洋次氏をお迎えしました。

◆『男はつらいよ』50作目の公開を迎え
(山田) 今から50年前に第1作をクランクインしたのですが、その時は50年後に、第50作を上映するなんて夢にも思っていませんでした。そもそも1作で終わる予定でしたから。それがヒットして続編を作った。それからさらに作り続け、49作で打ち止めにしましたが、それから22年経ってまた新しい作品を作るなんて不思議な気持ちです。
(区長) 50年前の私はもう葛飾区の職員でした。『男はつらいよ』の1作目を見させていただいて、当時まだ有名な場所では無かった葛飾の魅力を発信できる作品だなと感じたことが今でも記憶に残っています。50作目も早速拝見しました。この次も出ないのかな、なんて思っていますよ。

◆作り手の想いは画面から伝わる
(山田) 僕の仕事は映画を作ることだから、それが楽しくなくてはいけない。苦しみながら作った映画では観客も楽しんでくれませんから。作り手が楽しみながら、最高の物を作ったなと満足できる作品を作ることを大切にしています。
(区長) 山田監督の映画を見ていると、終わったときに人と人のつながりの大切さに改めて気付かされ、映画を見て良かったなといつも心が温かくなります。
(山田) 映画は僕を中心にして、大勢の俳優やスタッフなどによって作られます。その全員が「良い映画を作ろう」という気持ちを持つことを大切にしなくてはならない。そういう気持ちは画面から観客に伝わるということを信じたいのです。
(区長) 区も職員一人一人が「区民の暮らしを良くしよう」という気持ちを持てるかで、同じ施策を行っても成果が違ってきます。私も常に区民とともに考えながら良いものをつくっていこうという気持ちで区政に取り組んでいます。監督のお話を聞いて、そういった姿勢をこれからも大切にしていこうと思いました。
(山田) 区役所に行くとその雰囲気で区政のあり方が伝わりますね。葛飾区役所は温かくて和やかですよ。
(区長) 区民の方が来庁したときに安心して相談できたり、手続きができたりするような雰囲気作りというのは大事にしています。
(山田) そういえば、寅さんが葛飾区役所に行くシーンがあります。「あなたの声を聞かせてください」と書かれたアンケート箱に向かって、寅さんが「あ~」って自分の声を聞かせるんだよね(笑)。
(第37作「男はつらいよ 幸福の青い鳥」の1シーン)

◆柴又は私の故郷
(山田) 1本の寅さん映画を作るたびに、ロケハンをしたり、何べんもロケに来たりで、何回も柴又に足を運びます。それを50回も繰り返したので、相当な回数、柴又に来ています。ですから僕にとっては葛飾の柴又は故郷と同じです。シリーズが回を重ねるに従って、柴又の商店が改築を始めて、軒の低い昔風なお店が多かったところがビルになったりして、それにはハラハラしていました。観光客は昔ながらの雰囲気が残っているから来るのであって、それが消えると柴又の魅力が無くなってしまうと意見を言ったりもしました。地元の皆さんも分かってくれたのでしょうね。区長や職員の人たちの努力もあって、今の帝釈天参道の雰囲気が保たれているのだと思います。
(区長) そのことについては、山田監督や地元の方などからたくさんお話をいただきました。その声を受け、地域の皆さんと力を合わせて街づくり条例をつくるなどの取り組みで昔ながらの雰囲気を残すことができました。そうした中で、今の柴又があると思っています。山田監督にはとても感謝しています。その後、平成30年に柴又が都内初の重要文化的景観に選定されました。選定されるまでには約7年掛かりました。選定後にはさまざまな制約が出るため、住民の方の理解を得る必要がありました。良いものを残そうという住民の気持ちと努力無しでの選定はあり得ませんでした。

◆山田監督が思う葛飾の魅力
(山田) 葛飾の魅力は今でも小さい商店と区民の生活が結びついていることじゃないかな。50年前の僕たち都民はみんな小さな商店で買い物をしていました。いつしか大きなスーパーやコンビニなどができて、小さな商店は無くなっていった。それは住民の生活にとっても景観にとっても50年の大きな変化だと思います。昔は「きゅうりください」と子どもが顔見知りの八百屋さんに買い物に行くと八百屋のおばさんが「いい子だね。おまけしてあげるよ」というように、会話を通して人間的交流があった。今ではバーコードで値段が分かり、会話も無くなった。そのうち、顔認証とかで無人のスーパーになるとか。
(区長) そのことはまさに問題になっていて、葛飾区民の方は対面販売の良さをすごく感じています。買い物をしながらいろいろな会話をする。そんな人との交流というのはとても大切なことで、区内の商店街ではお客さんと会話するということをすごく意識してやっていますね。特に東日本大震災の後に、人との結び付きや絆の大切さが理解されたと感じます。そこに葛飾の良さや魅力があると思うので、失われないようにしていきたいと思っています。
(山田) これは日本全体の問題と思うのですが、日々変化していく時代の中で僕たちはどんな生活を望んでいて、何を幸せと言えるのか。今真剣に考えないといけないと感じています。

◆50作目について
(山田) 50年かけて作られた映画は今までにも無いし、これからも作られないと思います。寅さんのファンには「この作品でまた寅さんに会えますよ」と自信を持って言えるのだけど、寅さんのことを知らない若者や中学生、高校生の子たちにもぜひ見てもらいたい。寅さんは困った迷惑な人間なのだけど、その存在や言葉を知って、こんな型破りな人がいると楽しいなとか、いてもいいんだなと感じてくれたらと思います。寅さんは、妹のさくらやおいちゃんたちといつも大喧嘩をして旅に出るが、やがて柴又の街に戻ってきて仲直りをする。今はそんな関係が家族とか地域のコミュニティで、できなくなってきている気がする。人と人がつながっていくことが面倒というかとても不得手になっているのではないか。そんなことも考えながら見てもらえればなと思います。

◆新年の抱負
(山田) 抱負というより願いになるけど、今は世界情勢が何かと緊張状態にある。平和な世界にするために、まずは競争をやめてほしい、仲良くする努力をしてほしいと思います。そして、核兵器を無くすことですね。あともう一つ、寅さんがヒットしますように!(笑)
(区長) もうすぐ寅さん記念館の来館者数が500万人を突破します。50作目も公開され、今まで以上にたくさんの方が柴又に来てくれて、もっと葛飾の魅力を全国に届けていければいいなと思っています。そして『男はつらいよ』が大ヒットすることを祈願しています。

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